2021.03.03 (Wed)
「オレンジの壺」 宮本輝


オレンジの壺 宮本輝
結婚生活が破綻して落ち込む佐和子を励まそうと、父親は事業を始めるように勧める。そのとき、家業の創業者である祖父が彼女に遺した日記のことを思い出す。弁護士が永らく保管していた日記から、大戦間に渡欧して奮闘する日々が甦る。祖父の真意もわからないまま佐和子は生きる糧を求めてパリへ向かう。
再読~。
今持ってる本はこの新装版の文庫なんだけれど、
元々単行本を買ってて・・・
なんで売ってしまったのかと今絶賛後悔中。
大好きな本です。
その理由は毎回読んでて飽きない。
ただ、時代を感じる表現が数か所ありましたけれどね。
第一次世界大戦時代なので、その当時の田沼(祖父)が「土人」と書くのは
多少わかるとはいえ、
「女は歴史が苦手」とか「女は〇〇~」みたいな表現が意外と多くて
驚きました。
気持ちの「再読シリーズ!」が始まると毎回この本を読んでしまうのは
きっと祖父の日記や祖父の手紙で当時の物語が何一つ解決してない
からなんじゃないかなーと思うのです。
これが、終わりスッキリ事件解決!だったらその後手に取る機会が
少なかったかも。
でも、謎は謎のまま。
下巻になると、レナーテの人生に感情移入してしまう。
これもまた上巻とは違った面白さがあります。
そんな感じで今回も楽しみましたが、数年後の再読シリーズの際、
また時代の変化を感じるのかなという多少の不安はあります。
2020.09.28 (Mon)
「法廷の王様 弁護士・霧島連次郎」 間宮夏生

法廷の王様 弁護士・霧島連次郎 間宮夏生
「俺以外に誰がいる?」 傲岸不遜にして毒舌。けれど一度法廷に立てば、負け知らずの“法廷の王様”霧島に舞い込んだのは、ストーカー殺人で起訴された青年の弁護だった。 とある事情から固辞する霧島だが、見かねた上司の計らいで渋々ながら元気が取り柄の新人女性弁護士・雨宮とともに弁護を引き受けることに。 青年の自白と“完璧”な状況証拠によって有罪確実な事件を逆転すべく、霧島が暴いた真実とはーー!? 軽妙かつ爽快。法廷小説のニューヒーロー登場。
霧島を崇拝する雨宮のウザさが、霧島の同僚の朝倉と吹越によっていい具合に調和された感じ。
雨宮がウザいんですよね(笑)
いや、彼女も頑張ってるんでしょうが、弁護士がこういうテンションでいいのか??
と思ったりはしたが、まぁ新人なのでそういうものか。
法廷ものは好きだけど、検察vs弁護士っていうことではなくて、「否認裁判」という。
なんだろう?否認裁判。
調べたけれど、この本の内容に沿うのかちょっとわからなかった。
そういうワケなので、弁護士がツラツラと述べて終わったという印象。
ついでに真犯人も挙げちゃって。
真犯人は読んでるとわかるよね。
怪しさがプンプンだったし(笑)
霧島の独壇場だったとはいえ、ここまでうまくいくかぁ~(笑)
でも法廷ものは好き。
ついでに言うと、吹越&朝倉のキャラと、霧島の妹、花蓮可愛い。
2019.04.24 (Wed)
「完璧な母親」 まさきとしか

完璧な母親 まさきとしか
流産を重ね授かった最愛の息子が池で溺死。絶望の淵で母親の知可子は、息子を産み直すことを思いつく。同じ誕生日に産んだ妹に兄の名を付け、毎年ケーキに兄の歳の数の蝋燭を立て祝う妻の狂気に夫は怯えるが、知可子は歪な“完璧な母親”を目指し続ける。そんな中「あなたの子供は幸せでしょうか」と書かれた手紙がー。母の愛こそ最大のミステリ。
面白かった(・∀・)
タイトルからして、湊かなえさん系のまぁ胸くその悪い母親が登場するのかと思っていたのです。
確かに最初はそんな感じアリアリだったんだけどね。
溺愛している息子が死んで、「あ!やり直せばいいじゃない!」と、
子供を作り、同じ日に産み(作る日から計画的)、名前もほぼ同じ(生まれたのは妹だったけど)
誕生日プレゼントには死んだ兄の分もあり、ケーキには兄の歳の数のローソクもつける。
「今日でお兄ちゃんは〇歳、はるちゃん(妹)は〇歳」と。
それを当たり前にして生きてきた妹。
ふと、自分の存在価値を疑問に思う。
父はそんな状態を気味悪く、家庭から離れていく。
ただ、母親はある時を境に立ち直るんだよね。
でも、娘はそうはいかない。
ここからがこの話の面白さだったなぁー。
勝手に一人立ち直る母親と、取り残された娘。
そして、もう1組の家族。
苦手かなと思ってたけど、意外に楽しめました(*´▽`*)
2019.04.16 (Tue)
「殺人出産」 村田沙耶香

殺人出産 村田沙耶香
今から百年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日、突然変化する。表題作他三篇。
【目次】
殺人出産/トリプル/清潔な結婚/余命
ものすごく独特な感覚のひとだと思う。
結構ついていけない私は旧石器時代の人かもしれない。
表題作の「殺人出産」は10人産んだら1人殺していいって話。
もう恋愛結婚&出産なんて過去の遺物(!)で、この時代はシステムに乗っ取り、妊娠、出産をする。
そこに愛なんてものはない。
産め増やせや。
10人産んだら特別に1人殺してもオッケー。
ただ、自分に殺意があって、殺したいと思ってからの10人でしょ。
10人=10年というワケでもないし、なんだかんだで出産は命がけ。
かなりリスク高いと思うなぁー。
と、変な感想を持ちました。
次の話の「トリプル」
うーん。旧石器時代から来た私はこの話苦手ww
主人公に対して、血眼になって怒る母親もどうかと思うけれど、
トリプルでのセックスが変(--;)
儀式的な感じがするし、まぁ・・・自分がしたいか?と聞かれると
「勘弁してくれ」
としか言いようがありません。
2019.02.16 (Sat)
「天然石ねこまち堂は坂の上」 水沢あきと

天然石ねこまち堂は坂の上 水沢あきと
スポーツ推薦で高校進学を決めた少女・鈴。彼女は地元を離れ、大好きだった祖父が興した“天然石アクセサリー”のお店へ居候することに。しかし!若くして店を継いだ彼女の叔父・瑠璃は最悪な青年だった。彼は“超”がつくほどのへんくつ屋。生真面目で一直線な鈴は、彼と口論の日々、日々、日々…。だが、瑠璃は石を通して不思議な力で客を癒す力を持っていた。そして同じ血を継ぐ鈴にもその力があるようで…?坂の上にある“天然石の店”を舞台に贈る、“石”と人との優しい絆の物語。
石を触るとその人の思いとか、記憶がよみがえる・・・っていう設定でいいのかな?
こういう設定なのかな?
と、思ったところで終わった。
ファンタジー的な要素がありました。
もう少し丁寧に・・・して・・・欲しかったかもー。
2話目だっけ?
同級生が登場した話は好きだったけどね。
石=


宝石じゃないのか!?と、思うわけです。
まぁこの設定であれば続くかもしれませんねー。
1冊だけだと妙に雑っていうか。
もう少し丁寧な、私が納得する何かが欲しかったです。
2019.02.12 (Tue)
「一つ屋根の下の探偵たち」 森川智喜

一つ屋根の下の探偵たち 森川智喜
怠けものの探偵と働きものの探偵、二人の探偵とハウスシェアを始めたライター浅間修は同居人同士を対決させて捜査についてルポルタージュを書くことに。二人が捜査するのは、奇妙な密室で男が餓死し、その床にはアリの巣のような穴があいていた“アリとキリギリス”事件!果たして勝つのはどちらか!?
初めましての作家さんかな??
正直・・・・
よーやっと読んだ。
時間かかったー。
人物に面白味がないんだもん。
っていうより、何より3人で住むことに!?
いろいろと不可思議な展開ですが、
一番不可思議だったのは、殺害方法・・・
いや・・・それもあるかもしれないけれど(笑)
犯人すげー。
根気有ります。
その根気を別のことに生かしたらいいんじゃないかと
思うんですけどね。
そのくらい根気を感じました。
2019.01.09 (Wed)
「心中探偵 密約または闇夜の解釈」 森晶麿

心中探偵 森晶麿
死にたい。でも一人じゃ死ねないー。並外れた美貌と知性を兼ね備えながらも心中を渇望する華影忍が理想の女性と巡り会い、遂には闇夜に服毒心中を敢行。だが翌朝、自分だけ目覚め、死んだ相手は見知らぬ財閥の令嬢に成り代わっていた…。殺人疑惑がかけられる中、忍は盟友の若き大学教授、通称“黒猫”の助けも借りて事件の真相を探り始める。
何かの続編らしいんですけれど、あまり気になりません。
しいて気になるとしたら、華影忍の女クセの悪さ。
心中しようとしているくせに、何っていうか・・・手あたり次第!?
妻もいるのに・・・何をやっているのやら・・・
心中っていうから、なんとなく少し前(昭和初期とか)の話かなーと思ってましたら、ふつうにスマホとか出てくるし現在の話のようです。
自分の妻の道子を妙に自分の編集担当の溝渕に譲ろうとするし~。
なんなのー。この人ー。
しかし、途中から死ぬ気も忘れ事件解決に奔走します。
でもでも、このラスト。
なんか・・・怒涛すぎてこれまでの展開とスピード感が違ってて
「え?え?え?」
って思ってる間に終わった。
そこに関しては華影忍と全く一緒の気持ちになりました(笑)
道子さんはもう少し報われてもいいと思う。
2018.11.02 (Fri)
「跡を消す」 前川ほまれ

跡を消す 前川ほまれ
気ままなフリーター生活を送る浅井航は、ひょんなことから飲み屋で知り合った笹川啓介の会社「デッドモーニング」で働くことになる。そこは、孤立死や自殺など、わけありの亡くなり方をした人たちの部屋を片付ける、特殊清掃専門の会社だった。死の痕跡がありありと残された現場に衝撃を受け、失敗続きの浅井だったが、飄々としている笹川も何かを抱えているようでー。生きることの意味を真摯なまなざしで描き出す感動作!第7回ポプラ社小説新人賞受賞作!
曰く付きの掃除人。
孤独死で何日も発見されずに腐臭満載の部屋とか、自殺した部屋とか。
そういう部屋を専門にお掃除する会社です。
社長の笹川はいつも喪服。
飲み屋で声かけられてバイトから始める浅井。
でもねぇー。簡単に出来る仕事でもなく、「どうせバイトだしー」的な気持ちで
いるんですが、そこからいろいろと、自分なりに考えて前向きになり、
笹川すら前向きにさせるっていう・・
ヒューマンドラマみたいでした。
大切な人に死なれるのはイヤかも。
なんて思いましたが、それ以上に死んだあと、腐臭だらけになるのだけは
気を付けたいと思いました(・ω・)ホント。
描写が物凄く丁寧で、えぇ。蛆とか蠅だったら読みなれているからまだしも、
人から出る脂っていうんですかねー。人も溶ける。
・・・そんな描写が丁寧に書かれてました。
気を付けよう。
2018.06.06 (Wed)
「小説家・裏雅の気ままな探偵稼業」 丸木文華

小説家・裏雅の気ままな探偵稼業 丸木文華
売れない小説家・裏雅が「真珠姫」と呼び、ひそかに観察を続けているのは、彼を「雅兄様」と慕う伯爵令嬢の茉莉子。一見おっとりとして可愛らしい茉莉子だが、雅は彼女の秘められた特性に興味を禁じ得ない。茉莉子はある日、「本業の小説のほうはさっぱりだが推理力には定評のある」雅のもとに、女学校で噂になっている不可思議な「幽霊」の話をしに来るのだが…?
【目次】
小説家・裏雅の気ままな探偵稼業/珠代
明治というか大正というか、この時代に萌える作家さんって結構多いみたい。
そのパイオニアははいからさんだろうなぁ。
そんないかにも昔のおぜうさまである茉莉子。
おっとりして、女学校に行き「ごきげんよう」「おねえさま」なーんて言う世界に住むおっとりお嬢様。
でも、性格はおっとりでぼんやりながらも、ちょっと変わってます。
その変わっている感じが可愛いです。
しかし、唐突に終わった感じがしないでもない。
まぁこれは続編が作れると言えば作れる終わり方かな。
タイトルに「気ままな探偵稼業」とありますが、文中で雅さんは何一つ
探偵稼業をしていないのでは・・・?
まぁページのないところで何か調べていたようです。
で、もう1つの作品「珠代」
こちらはまた別の話です。
こっちは分かりやすかったかな。
ラストも分かりやすく、「ありがち」といえば「ありがち」でした。
まぁそれでもいいかも。
2017.07.25 (Tue)
「あとは野となれ大和撫子」 宮内悠介

あとは野となれ大和撫子 宮内悠介
中央アジアのアラルスタン。ソビエト時代の末期に建てられた沙漠の小国だ。この国では、初代大統領が側室を囲っていた後宮を将来有望な女性たちの高等教育の場に変え、様々な理由で居場所を無くした少女たちが、政治家や外交官を目指して日夜勉学に励んでいた。日本人少女ナツキは両親を紛争で失い、ここに身を寄せる者の一人。後宮の若い衆のリーダーであるアイシャ、姉と慕う面倒見の良いジャミラとともに気楽な日々を送っていたが、現大統領が暗殺され、事態は一変する。国の危機にもかかわらず中枢を担っていた男たちは逃亡し、残されたのは後宮の少女のみ。彼女たちはこの国をー自分たちの居場所を守るため、自ら臨時政府を立ち上げ、「国家をやってみる」べく奮闘するが…!?内紛、外交、宗教対立、テロに陰謀、環境破壊と問題は山積み。それでも、つらい今日を笑い飛ばして明日へ進み続ける彼女たちが最後に掴み取るものとはー?
初めまして・・・の作家さんかな。
今回の直木賞にノミネートされた作品です。
タイトルが素敵よねー。
なんか凛とした大和撫子を想像します。
でも、この本に登場する日本人はナツキ一人です(。・ω・)
設定がややこしいんだよね。
ナツキは20歳なのかな。
どうなのか。
あと説明がかなり不足している感じがしてねー。
恩田さんも説明は不足しているけれど、途中でなんとなく理解できる。
でも、宮内さんの場合は理解できない。
うーーーん。キャリアの差か??
そのせいか頭の柔軟性がなくなってきている私からすると
少し状況や世界を楽しむことが出来ませんでした。
なんで、大統領になったアイシャが劇をやるんだろう。
なんで歌うんだろう。
そういうのを含めて理解できなかった。
あと、あの武器売りも何をしたかったんだろう。
でも、直木賞ノミネートなんだよね。
凄い本なんだよね。
ちょっと私に分からなかっただけ・・・なのか?